やすぎのやすらぎ人に出会う
子どもの本 つ〜ぼ
店主 市ヶ坪裕子さん

今も伝統的な街並みが残る安来。
大好きなものを届ける人の想いは、あなたの心をやさしく照らします。



西灘通りの情緒ある古民家の絵本屋さん

島根県安来市安来町に「子どもの本つ〜ぼ」はあります。オープンは2017年。
安来には昔から、神在月(かみありづき)に全国から出雲の国に集う八百万(やおよろず)の神々が、一息おやすみをするという民間伝承を持つ十神山があります。(みちくさ便りの由来もここから来ています)その麓にある安来港は、古くからたたら製鉄などを積み出す港として大変栄えました。港へと続く市街地の西灘通り(にしなだ)は今も懐かしい建物が残る街並みです。その一角に「子どもの本つ〜ぼ」はあります。改築工事の時に壁から出てきた新聞紙をみると明治18年と記載されていたそうです。おそらく幕末頃からある建物ではないかとのことです。お店の中に入ると市ヶ坪さんの大好きな絵本や雑貨工芸品が出迎えてくれます。

絵本の魅力をローカルで届けたい。

市ヶ坪さんと絵本の出会いは大人になってから。最初の入り口に童話作家の今江祥智さんがいたことも大きく影響しています。そこから絵本の世界にのめり込んでいったそうです。大好きな作家に直接会いに行くにつれ、いつか絵本にどういう形でか関係する仕事がしたい、自分の大好きな絵本を一人でも多くの人に届けたいという強い思いが市ヶ坪さんを動かしました。

ものづくりの人々を世の中に届けたい

子どもの本をまん中に、わくわくどきどきするもの、心和むもの、美しいものを届けたいと思っていたそうです。陶芸家や伝統工芸など、ものづくりの人々への憧れが昔からあったという市ヶ坪さん。ご自身は、ものを作る人と使う人の間に立ち、ものと関わりながら、それを伝え届けたいという思いがあったそうです。「子どもの本つ〜ぼ」のもう一つの顔、ギャラリースペースはそんな市ヶ坪さんのものづくりへの愛情の証です。

なぜここ安来にお店を出したのか?

子ども時代の安来の原風景を思うと、例えば、安来の夏の風物詩の一つである月の輪まつり。今よりも多くの屋台や人が集まり、お化け屋敷もあったり、大変賑やかだったそうです。当時の街には文房具屋さん、八百屋さん、肉屋さん、魚屋さんなど、個人商店もたくさんあり、今より、もっと人と人が行き交う町でした。大人になってあらためて気づかされたこと、それは、安来の町の風景の美しさ。曲がり道に、木の橋の残る場所に、町のあちらこちらで見かけるお地蔵さん、歳神さん、そして安来の町の人のあたたかさに、そんな安来の風景の中に自分もいたい。ただ単純に安来が好きと市ヶ坪さんは言われます。

時代の流れもあり立ち寄る人も当時よりは減り、少し寂しく感じる中で、昔から安来はお隣の米子市と松江市の間に挟まれて通過する場所だと言われていましたが、安来のことを知れば知るほど、ここにはたたら製鉄や月の輪神事に代表するような多くの古代から今に繋がるストーリーがあります。宝物がたくさん残る土地。だからこそ、通過地点ではもったいない。人々が立ち寄る場所として、できたら山陰のまん中の繋げる場所になればいいと願っているそうです。そんな強い郷土愛から、市ヶ坪さんはこの場所を選びました。

十神山:神在月(かみありづき)に全国から出雲の国に集う八百万(やおよろず)の神々が、一息おやすみをするという民間伝承を持つ

子どもの本つ〜ぼが届けたい
絵本の魅力とは

子供も読める、大人も読める、子供と大人が一緒に楽しむこともできる。世代を超えた解釈ができること。絵本の中には、色々な表現があります。写真、イラストレーションも、漫画、詩。色々なジャンルの表現がそこに入り、一つのものができる、それが小さな世界の中で語られること。

劇場に行かなくても、映画館に行かなくても、自分が持った手の中のその一つのアートが、絵本というものの中に閉じ込められています。今日出たばかりの1冊も、50年前に出た1冊もその面白さや楽しさは何も変わらない。新しくて古い、古くて新しいもの。こんなすごい世界はない。この小さな絵本という世界は、色々な可能性を秘めた総合芸術で、それを誰でも身近の日々のイトナミの中にみることができること、そして全ての人にとっての贈り物(ギフト)である。市ヶ坪さんはこの限りないパワーのある絵本の世界を安来から伝えていきたいそうです。

子どもの本つ〜ぼがオススメ
0歳から100歳までの人に読んでほしい絵本3冊

日本の挿絵画家・グラフィックデザイナーの第一人者、宇野亜喜良さんによるお店の看板ロゴ。

絵本は子どものものだけと思っているのは、もったいないと思うのです。大人も充分楽しめる世界がそこにあるから、子どもはもちろん、初めての大人の方にも、ときめく1冊に出会ってほしいと思うのです。わくわくどきどきする1冊に出会ったら、そこから絵本の世界がぐーんと目の前に広がってきます。

ぼちぼちいこか
作:マイク・セイラー 絵:ロバート・グロスマン 訳:今江祥智

関西弁が何ともあたたかく響く1冊。いろんな仕事にチャレンジしていくけど、何もやってもままならないカバ君のユーモラスなお話。最後に「ここらでちょっとひと休み。ま、ぼちぼちいこかということや」

へいわとせんそう
作:たにかわしゅんたろう 絵:Noritake

これ以上ないくらいシンプルなことばと絵で、平和と戦争について表現されています。本作に寄せて、谷川さんは「戦争が終わって平和になるんじゃない。平和な毎日に戦争が侵入してくるんだ」と

ふたり 
作:瀬川康男 絵:富山房 

ネコとネズミの「ふたり 」の関係をユーモラスに描いた傑作。にやり、きらり、「り」のつくことばのリズミカルな響きが心地よく、躍動感のある絵とユニークな表情が何度読んでも飽きない一冊。

DATA

子どもの本つ〜ぼ

島根県安来市安来町1706
TEL / 0854-22-0078
営業時間 / 10:30〜18:00
定休日 / 不定休